顧問・企業法務

2025/06/02 顧問・企業法務

国保連から返戻・調査が来たらどうする? 介護事業者の初動対応とリスク回避のポイント

「国保連から返戻通知が届いたが、理由がよくわからない」 「このまま放っておくと、監査や指導につながるのでは…?」

介護事業所にとって、国保連(国民健康保険団体連合会)からの返戻・指導・調査は避けて通れないものです。

請求業務が複雑なうえに、人手不足や業務過多のなかで書類のミスが起きやすく、 気づかないうちに「不適切請求」と見なされるケースもあります。

今回は、実際の返戻・調査事例をもとに、介護事業者としてどう対応すべきか、 また、弁護士がどのような場面で支援できるのかを解説します。


【よくある返戻理由と、やりがちな“まずい対応”】

国保連からの返戻には、以下のようなパターンがよく見られます。

・加算要件の証明書類が添付されていない

・提供実績と記録上の時間が合っていない

・日数や回数に不備がある

・文言や略語の使い方が不明確で誤認された

返戻通知を受けた際、「とりあえず再提出すればいい」と判断しがちですが、 実はこの“場当たり的な対応”が、後の監査・指導につながるリスクを高めます。


【返戻通知が来たときの初動対応ポイント】

  1. 返戻理由を文書で整理し、根拠条文や通知と照らす

  2. サービス提供責任者や記録担当者から事情聴取する

  3. 提出済み書類の控え・バックデータを確認する

  4. 類似の返戻履歴がないか確認する

  5. 再提出の方針を決める前に、弁護士または社労士と相談する

初動の丁寧さが、後の行政対応の印象・成否を大きく左右します。


【是正報告・文書回答の“書き方”で気をつけるべきこと】

是正報告書(=行政から指摘を受けた場合の改善計画書)や回答文書を作成する際、

・「曖昧な表現」

・「責任の所在をぼかす書き方」

・「反省や改善策の具体性がない」 といった内容は逆効果となることがあります。

例:「担当者の理解不足が原因でした。今後気をつけます。」 → 改善策が不明で、再発防止に向けた姿勢が伝わりません。

弁護士が入ることで、過度に責任を認めすぎず、改善意思を伝える文面を整えることができます。


【弁護士ができるサポートの具体例】

・返戻理由の法的整理とリスク評価

・是正報告書、回答文書の作成支援

・ヒアリング

・調査立会いへの同席

・再提出時の戦略的アドバイス(提出の可否判断を含む)

・継続的な請求体制の見直し(顧問契約によるサポート)

実際に、弁護士が間に入ったことで「本来は返戻対象でなかった」と判断され、 返戻が撤回された事例もあります。


【まとめ:返戻は“予兆”です。放置せず、早めに対応を】

国保連からの返戻や指導は、「このままではマズい」という予兆です。 現場のミスに見えて、実は経営やガバナンスの課題が背景にあることも多く、 そこを見直すチャンスでもあります。

まずは返戻理由を丁寧に把握し、独断で対応せず、第三者(専門家)と共有する。 そのことが、結果的に行政との信頼関係にもつながります。

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© 弁護士 下田和宏