2025/05/09 コラム
夜勤明けに7時間残業!?看護師の労働時間は合法か──労基法と現場のリアルを弁護士が解説
「夜勤が終わったあとに、そのまま日勤の業務を命じられた」「休憩なしで16時間以上勤務している」──こうした声は決して珍しいものではありません。
私自身、妻が看護師として勤務しており、その働き方の過酷さを日々実感しています。特に子育て中の家庭では、家事や育児との両立が困難で、精神的にも肉体的にも限界を迎える方も少なくありません。
今回は、そんな看護師の労働環境について、労働基準法の観点から問題点と対策を整理してみたいと思います。
看護師の過重労働は違法?労基法から見る労働時間の限界
看護師の職場では、「36協定」が形骸化していたり、そもそも労使協定が未締結のまま長時間残業が横行しているケースもあります。
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労働基準法では、原則1日8時間・週40時間の労働時間制限があります。
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これを超える場合には「時間外・休日労働に関する協定」(いわゆる36協定)が必要。
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さらに、労働時間が1日15時間を超えるような状態が常態化している場合、労働安全衛生法違反や過労死ラインの問題にもつながります。
とくに夜勤明けにそのまま残業させる行為は、実質的に連続勤務扱いとなるため違法性が高いといえます。
看護師業界に残る黙認文化とブラック労務のリスク
看護師の世界には「患者のために多少の無理は当たり前」「後輩が帰れないから自分も残る」など、無言の圧力や慣習が残っている職場もあります。
しかし、どれほど崇高な職業意識があっても、労働基準法は守られるべきです。法令遵守の意識が欠けたまま組織運営を続けると、
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残業代未払いによる請求訴訟
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労基署からの是正勧告
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離職者の増加による人材不足の悪化
といった深刻な経営リスクを招くおそれがあります。
36協定の整備から勤怠管理まで──経営側が取るべき具体策
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まずは36協定を確認・締結(形式だけでなく実態に合わせた運用)
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タイムカードや勤怠システムを導入・記録を保存
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夜勤明け勤務の可否を就業規則やシフト作成時に明文化
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人員配置や業務分担の見直し(特定の看護師への過度な偏りを避ける)
中小規模の医療法人・介護施設では、人手不足ゆえに制度整備が後回しになっていることも多いですが、だからこそ法的な視点を入れておくことが重要です。
弁護士として、そして看護師の家族として伝えたいこと
法的支援の現場では、「訴えたいわけじゃないけど、誰にも言えなかった」という相談が多く寄せられます。現場の苦労を理解しつつ、冷静に法的リスクを見極め、現実的な対策を一緒に考える姿勢が求められています。
看護師の労働問題でお困りの経営者の方、あるいは働く看護師ご本人も、お気軽にご相談ください。
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