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2025/10/08 TOPICS

退職代行を使った社員が“有給消化中に転職”——会社はどう対応すべきか?

退職代行を通じて退職の意思表示をしてきた社員が、
「有給をすべて使ってから辞めたい」と申し出るケースが増えています。

しかし最近では、その有給消化期間中に転職先で勤務を始めている事例も見られ、
「これをそのまま認めて良いのか」「退職日はどこで区切るべきか」といったご相談が、中小企業から多く寄せられています。

本ページでは、退職代行を利用した社員が有休消化中に転職する場合の法的整理と、
企業としての実務対応について弁護士が解説します。

【1. よくある相談事例】

  • 有休を30日残して退職代行から通知が届いた

  • ところが同僚から「次の職場が決まっている」と聞いた

  • 有休中に別会社で勤務を始めるなら“二重就労”にあたるのでは?

  • 退職日はいつにすべきか?有休は全部認めないといけないのか?

こうしたケースでは、「有給消化の権利」と「二重就労の禁止」という二つのルールが衝突します。
まずは法的にどこまで許されるのかを整理しておきましょう。


【2. 法的整理:有給消化と転職の関係】

有給消化は原則として労働者の権利

労働基準法上、有給休暇は本人の申請があれば会社は原則拒めません。
しかしこれは在職中の“休養”を目的とした制度であり、他社で働くための期間ではありません。

有給中の就労は「就業規則違反」になり得る

有給期間中に別会社で勤務することは、就業規則で禁止されている「二重就労」に該当する可能性があります。
会社としては、「就労実態があるかどうか」を確認したうえで、転職先の入社日前日を退職日とする形で整理するのが実務的です。

退職日を合理的に確定できる

労働者の退職意思表示は、会社に到達した時点で法的に効力が生じます。
もっとも、いつ退職の効力が発生するか(=退職日)は、民法(原則2週間後)や就業規則の定め、退職届に記載された日付などを総合して判断されます。
転職先の入社日など合理的な事情が明らかな場合には、会社としてもその日程に合わせて退職日を確定させることが実務上多く行われています。


【3. 実務上の対応ポイント】

  1. 退職代行から届いた通知内容を文書で保管
     → 退職意思の到達日・有給希望の記載を明確に。

  2. 有休残日数と転職予定日の整合を確認
     → 二重就労の可能性がある場合は、転職先入社日前日を退職日に。

  3. 弁護士を通じた退職日調整
     →弁護士や 非弁業者が介入している場合も、会社側弁護士からの連絡ならスムーズ。

  4. 給与締め・支払スケジュールを考慮して社内処理を前倒し
     → 経理処理を止めず、退職者の未処理分を明確化。

  5. 有休の可否や日数は、支給前に会社として明確に判断することが重要です。


【4. よくある誤解とリスク】

  • 「有休を拒否できる」と思い込むのは危険
     → 単に「不信感がある」という理由では拒否できません。

  • 「給与から有給分を差し引く」はNG
     →有給を悪用されたと感じても、後から給与から差し引く(天引きする)ことはできません。

  • 「放置すれば自然に退職扱い」は誤り
     → 退職日は明確に処理しておかないと、後にトラブル化します。


【5. 弁護士が介入するメリット】

退職代行をめぐるトラブルは、感情論ではなく“形式処理”が重要です。
弁護士が入ることで、

  • 弁護士、非弁業者との交渉整理

  • 退職日確定の法的根拠づけ

  • 有休短縮の合理的判断
    がすべて明確になります。

また、「この会社は弁護士対応している」というメッセージが、
社内・社外への抑止効果としても有効です。


【6. 当事務所のサポート】

当事務所では、退職代行への対応を含む労務トラブルについて、
初回無料相談のほか、
3ヶ月55,000円(税込)×3ヶ月=165,000円(税込)の仮顧問契約を承っております。

  • 退職日や有休処理に関する法的整理

  • 通知書・回答書の文案作成

  • 弁護士間での調整

  • 再発防止策のアドバイス

中小企業様の「判断を迷わせない環境づくり」をサポートします。

初回無料相談フォームはこちら


【7. まとめ】

  • 有給消化と転職の両立は、法的には慎重な判断が必要

  • 転職先入社日前日を退職日とする処理が実務的

  • 弁護士介入により、非弁対応・退職日確定・給与処理が一括整理できる

© 弁護士 下田和宏(横浜パートナー法律事務所所属)