労働問題・労務相談

2025/07/29 労働問題・労務相談

夜勤明けに7時間残業? 30代〜40代のあなたが“働き方の限界”を感じたら

「夜勤明けに、そのまま残業へ。帰れるのは夕方。」
そんな勤務が当たり前になっていませんか?

30代後半〜40代。昔は体力でなんとかこなしていた夜勤も、最近では回復に2〜3日かかる。


それでも職場は「人手が足りないから仕方ない」と、容赦なくシフトを組んでくる。
同僚も我慢しているし、自分だけ「無理です」とは言い出せない。

でも、本当にこの働き方を、あと10年続けられますか?

看護・介護など夜勤を含む職場では、「夜勤明けに残業」という過酷な勤務が常態化していることがあります。
しかし、これは“業界の慣習”では済まされない違法行為となる可能性があります。

本記事では、30代〜40代の看護師・介護士の方が「働き方の限界」を感じたとき、
どんな視点で状況を整理し、どう動くべきかを法律の専門家としてわかりやすくお伝えします。

第1章 「30代後半からきつくなった」——よくある相談例から

当事務所には、以下のような声がよく寄せられます。

  • 「夜勤明けに6〜7時間も働いて帰宅、もう何もできずに寝るだけ」

  • 「子どものお迎えもあるのに、上司に“人手不足だから”で押し切られる」

  • 「夜勤の翌日にそのまま入浴介助を回された。さすがに倒れそうになった」

  • 「20代のときは何とかなった。でも今は1回の夜勤で身体がガタガタになる」

特に30代後半〜40代にかけては、体力の低下・家庭責任の増加(子育て・親の介護)などが重なり、
「仕事を続けたい気持ちはあるけど、もうこの働き方は無理かもしれない」と悩む方が一気に増えてきます。

ですが、多くの方がこうした悩みを「個人の体力の問題」として抱え込んでしまい、
「他の人もやってるから…」「相談したら迷惑がられるかも…」と声を上げられずにいます。

実はこうした“沈黙”が、職場の違法体質を温存させてしまっているケースも少なくありません。

第2章 夜勤明け残業は違法になり得る理由

まず前提として、労働基準法では「労働時間」「休憩」「休日」が明確に定められており、
夜勤明けにそのまま働き続けることが、すべて合法というわけではありません。

特に注意すべきは以下の3点です。

① 連続勤務の問題

夜勤(例えば16:30〜翌9:00など)の直後に、さらに数時間の残業を求められると、
実質的に24時間以上の拘束となることもあります。
これは「人間としての回復時間を奪っている状態」であり、過労死ラインに近づきます。

本来、勤務と勤務の間には一定の「休息時間(インターバル)」が必要です。
たとえ就業規則上に明記されていなくても、常識的な回復時間が与えられていなければ、
労働契約上の義務違反(安全配慮義務違反)とされる可能性もあります。

② 適切な休憩の未付与

夜勤・残業に共通して問題になるのが、「休憩が取れていないのに取ったことにされる」ケースです。
記録上は1時間休憩が入っていても、実際にはナースコール・介助・記録作業で休めていないという例は非常に多い。

こうした“見せかけの休憩”しか与えられていない場合、
労働時間としてカウントし直す余地があり、未払い残業代の請求対象にもなり得ます。

③ “暗黙の了解”が強制になっている

夜勤明けに残業を頼まれたとき、「断れる空気ではない」「全員やっている」という状況も要注意です。
これは黙示の残業命令(事実上の強制)とされる可能性があり、
「自由意思でやったことだから残業代は払わなくてよい」とはいきません。


第3章 今の職場で改善できる可能性

「違法の可能性があるといっても、いきなり会社と戦うなんて無理です」
——そう感じるのはもっともです。
ただし、“戦う”ことと“伝える”ことは別物です。

実際、以下のような対応によって、
穏便に職場環境を改善できた事例も少なくありません。

◆まずは証拠を残すことから

  • シフト表や勤務表のコピー

  • LINEやメールでの指示・会話の記録

  • 実際の休憩時間や業務内容を記録したメモ

これらは、「違法」と言うための武器というより、
「客観的に状況を整理するための材料」です。
→ 上司に相談するときの裏付けにもなります。

◆直属の上司ではなく、“管理者”に伝えるという方法

直属の上司が忙しすぎたり、逆に勤務表の元凶だったりする場合は、
その上の施設長や法人本部の労務担当者に「状況として伝える」だけでも、
現場のバランスが変わることがあります。

「誰かが言ってくれたから、他の人も声を上げられるようになった」
そんなパターンも現場ではよくあります。

◆どうしても言いにくい場合は、弁護士の名前で“やんわり通知”

「個人で言うと揉めそう」「波風立てたくない」
そんな方のために、当事務所では、あくまで“穏やかな文面”で職場側に通知を出すサポートも行っています。

  • シフト改善のお願い

  • 未払い賃金の請求通知

  • 配置転換の希望表明

など、直接伝えにくいことを第三者が冷静に代弁するだけで、話がスムーズに進むケースもあります。

第4章 実際の相談例:あの時、相談してよかった

相談者:38歳 女性/看護師(契約社員・夜勤あり)
勤続年数:約12年/家庭:中学生の子どもあり

この方は、週1回の夜勤と週3回の日勤を掛け持つような形で勤務していました。
しかし、人手不足を理由に「夜勤明けも午後まで残ってほしい」と言われることが増え、
夜勤後にさらに6〜7時間働かされる日が月に数回ある状態になっていました。

「自分だけ文句を言うのは気が引ける」
「職場に迷惑はかけたくないし、辞めるつもりもない」
そう思いながら我慢してきましたが、
ある日、勤務中に立ちくらみで倒れ、そのまま通院することに。

このままでは身体がもたないと感じ、インターネットで当事務所のコラムを読み、無料相談をご利用いただきました。

最初の一歩は、本人がシフトや休憩の記録を時系列でまとめたことでした。
それをもとに職場の労務担当に弁護士名義で「事実確認と勤務改善を求める通知」を出したところ、
比較的早い段階で法人本部が対応に乗り出し、以下のような改善がなされました。

  • 夜勤明け残業の原則廃止

  • 本人の希望に基づく勤務配慮(午前のみ勤務など)

  • 過去数ヶ月分の残業代一部支払い

この方は最終的に退職することなく、
「仕事は好き。だからこそ、身体を壊さずに続けたかった」と話しておられました。


第5章 “働き方の棚卸し”という選択

30代後半から40代にかけて、体力・家庭責任・職場の人間関係など、
さまざまな変化が重なり、「このままでいいのか」と思い始める方は少なくありません。

でも多くの方は、「自分が我慢すれば済むこと」と考えてしまいます。
それが、知らず知らずのうちに身体を壊し、心をすり減らす原因になっているのです。

私たちは、すぐに訴訟を起こすことや、強く戦うことを勧めているわけではありません。
むしろ、「今の働き方を一度棚卸ししてみる」——その第一歩を支えることが、私たちの役割です。

  • 今の働き方に法的な問題があるか知っておきたい

  • 辞めるつもりはないが、改善の余地があるなら相談したい

  • 無理せず働き続けるための選択肢を知っておきたい

そうした気持ちを持った段階でのご相談も、大歓迎です。


身体が悲鳴を上げる前に、一度だけ立ち止まってみませんか?

あなたの状況を整理し、法的にできること・職場への伝え方など、
今後の働き方を見直すヒントをご提案します。

無料相談のお申し込みはこちら
看護・介護職の働き方に関するご相談実例はこちら

第6章 「今すぐ動かなくてもいい。でも、“選択肢”は持っておこう」

30代〜40代で、夜勤明けに無理を重ねて働いている人は、本当に多くいます。
そして皆さん、こうおっしゃいます。

「もう少ししたら、落ち着くかもしれない」
「あと何年か頑張れば、夜勤からは外れるはず」

——でも、本当にそうでしょうか?

職場は、あなたが声を上げない限り、今のシフトを“問題ないもの”として続けていきます。
逆に言えば、「問題がある」と丁寧に伝えることで、変わる可能性は必ずあります。

自分の身体や生活を守ることは、ワガママではありません。
「続けるために見直す」ことが、いまのあなたにできる最善の判断かもしれません。

今すぐ辞める必要はありません。
でも、「このまま無理して倒れる」前に、選択肢だけでも知っておいてほしいのです。


要点まとめ

  • 夜勤明けの残業が常態化している場合、労基法違反の可能性がある

  • 休憩が形式的だったり、連続勤務が続いたりすれば「違法残業」になり得る

  • 30代〜40代は“体力の限界”と“責任の板挟み”で苦しみやすい世代

  • 職場に声を上げづらいときは、証拠確保+外部相談が有効

  • 弁護士からの通知で穏便に改善されたケースも多数

  • 「働き方を棚卸しする」だけでも、将来の安心につながる

ご相談はこちらからどうぞ

© 弁護士 下田和宏