労働問題・労務相談

2025/07/02 労働問題・労務相談

夜勤明けに残業命令…これ違法? 看護師が残業代を請求できるケースとは

「夜勤が終わった後、そのまま日勤のシフトに入れられた」 「仮眠も取れないまま16時間以上働いている」

──そんな看護師の声は、決して珍しいものではありません。

私自身、妻が看護師として勤務しており、その働き方の過酷さを身をもって感じています。 特に子育てや介護との両立を強いられる方にとって、 夜勤から連続勤務になるようなシフトは身体的にも精神的にも限界を迎えるリスクがあります。

今回は、夜勤明けの残業が労働基準法上どう位置づけられるのか、 そして、看護師が残業代を請求できるのはどのようなケースかを整理します。

夜勤明けに残業命令──それは「連続勤務」とみなされる可能性があります

労働基準法では、原則として「1日8時間・週40時間」以内の労働が限度とされています。 これを超える場合には、いわゆる「36協定(時間外・休日労働に関する協定)」の締結が必要です。

しかし、夜勤が明けた直後にそのまま残業を命じられた場合、 形式上は「日をまたいでいる」ように見えても、実質的には休憩もなく連続して勤務している状態です。

このようなケースでは、実質的な連続勤務=違法労働時間と判断される可能性が高く、 安全配慮義務や労働安全衛生法違反が問われることもあります。

「残業代は出ない」と言われた? それは通用しません

勤務先によっては「夜勤明けは自主的に残ってくれてるものだから」といった空気の中、 残業代の支払いがされないこともあります。

しかし、法律上は次のような判断基準が取られます:

  • 指示が明示されていなくても、業務上やむを得ず残った場合

  • “帰りづらい空気”や人手不足で残らざるを得ない状況

このような場合には、黙示の指示があったものとして、 労働時間と認定される可能性があります。

夜勤中の仮眠や休憩についても同様で、 たとえば「ナースコールが鳴れば即対応」「仮眠中も勤務服のまま待機」など、 現実には自由利用ができない状態であれば、 それは手待ち時間=労働時間として扱われます。

💡 夜勤中の手待ち時間や仮眠時間に関する法人側のリスク解説はこちら: ▶ 夜勤中の仮眠・手待ち時間と36協定の注意点

実際に180万円の残業代を勝ち取った事例も

当事務所で取り扱った実例では、 夜勤明けに7時間以上の残業を強いられていた看護師の方が、 タイムカードやLINEの履歴などを証拠として集めた結果、 弁護士介入により約180万円の残業代を請求・回収することができました。

労基署が「勤務実態が曖昧」として動かなかったケースでも、 法的視点から記録を整理し、必要な反論・交渉を行うことで結果を出すことが可能です。

解決事例はこちら

泣き寝入りしないために今できること

「周りも同じようにやってるから…」「何年も前のことだから…」と諦めていませんか?

未払い残業代は、原則として過去2年(※3年の場合もあり)まで請求可能です。

まずは以下のような証拠を確保しておきましょう:

  • タイムカードや勤怠システムの記録

  • シフト表・申し送りノート

  • LINEやメールなど、指示のやり取りがわかる履歴

  • 自作の勤務メモ(手書きでもOK)

証拠が揃っていなくても、弁護士に相談しながら進めることで、 事実の裏付けを一緒に構築していくことができます。

まとめ:夜勤明けの長時間勤務は「当たり前」ではありません

看護師の仕事は尊く、責任も重いものですが、 その負担が過重になって健康や生活を犠牲にするようでは本末転倒です。

「これは違法では?」と感じたら、まずは話を聞かせてください。

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© 弁護士 下田和宏