2025/06/27 顧問・企業法務
【労働審判・和解事例】退職時の有給取得・解雇無効をめぐる申立て、初回期日で早期解決
◆ 相談内容
米軍基地内の業務を個人事業として請け負っていたご依頼者様は、事業終了に伴い従業員との雇用契約を終了。その後、元従業員から、解雇の無効と有給休暇の未消化分の支払いを求めて労働審判を申し立てられました。
ご依頼者様としては、事業自体を終了しており、解雇無効とする余地はないとの立場。また、有給休暇についても、退職直前の事後的な申請であったため認められなかったという経緯がありました。
◆ 解決までの経緯
労働審判の期日には、申立人とその代理人2名、相手方は当職のみが出席。申立人側は「有給休暇の申請は退職通知の前だった」「最初は了承されたのに後から拒否された」といった主張をしていた一方、こちらからは「当初から事後申請であり、認められない対応をしていた」と明確に伝え、裁判官の心証もおおむね当方の見解に近いものでした。
なお、申立人の解雇無効の主張については、実際に事業が終了していることから、審判委員からも認めがたいとの判断が示されました。
◆ 和解の経緯と判断
本件は、金額としては比較的少額であった一方、法的にもこちらに勝ち筋があり、仮に訴訟に移行しても勝訴は十分可能と判断される事案でした。もっとも、これ以上争いを続けることによるコストや労力とのバランスを考慮し、損切りという経営判断のもと、初回期日での和解に応じることとしました。
申立人が強くこだわっていた有給休暇6日分相当額について、その場で一定額を支払うことで、口外禁止・非接触・非誹謗中傷条項等を含む包括的な和解が成立しました。
◆ 和解の主な内容
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有給休暇相当額の支払い(具体的金額は非公開)
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当事者双方および関係者による口外禁止・非接触・非誹謗中傷条項を含む
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本件を含む一切の紛争の終結を明示した清算条項
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費用負担は各自
◆ 解決のポイント
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事業終了の事実を根拠に、解雇無効の主張を退けたこと
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有給取得に関する感情的な対立を、事実関係に基づいて冷静に整理し、心証を形成
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初回期日での和解誘導を活かし、コスト・労力・時間の面から合理的な損切り判断を実現
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依頼者の立場と今後のリスク回避を最優先に、トラブルを最小限で終結
◆ 弁護士からのひと言
本件では、解雇無効の主張も含まれておりましたが、依頼者が個人事業として営んでいた業務の終了が明確であったことから、労働関係の継続を前提とした主張には実体的根拠がないことを冷静に整理し、審判委員に適切に伝えることができました。
最終的には、依頼者の意向と実務的なコストバランスを踏まえ、「勝てる事件」であっても敢えて損切りという選択を取ることで、より納得感のある早期解決を実現しました。
法的正当性だけでなく、依頼者にとっての「最善の落とし所」を見極める――これも弁護士の重要な役割だと考えています。