2025/11/14 時事・雑感コラム
不倫は倫理違反ではなく「イメージの破綻」 有名人が炎上する本当の理由
芸能人やインフルエンサーの不倫報道が出るたびに、「一発退場」となるのが日本ではよくある光景です。
つい先日も、人気ユーチューバーがオープンマリッジ宣言で炎上し、登録者が20万人ほど減ったと話題になりました。
500万規模のチャンネルなら数字の上では軽傷に見えますが、本質はそこではありません。
大事なのは「社会がその人に期待していたイメージの線」を越えてしまった、という点です。
建前の倫理と現実の倫理はまったく別のもの
弁護士をしていると、不倫そのものは珍しい話ではありません。
誰かが誰かに嘘をつき、秘密を抱え、揺れ動く。
人間はそんなに整った生き方はできないものです。
これが現実だと感じています。
ただ、世間が求めるのは“建前としての倫理”です。
「自分はやるかもしれないけれど、他人にはやってほしくない」
そういう都合のいい倫理観が世の中にはあります。
芸能人が強く叩かれるのは、この建前を裏切ったように見えるからであり、
本当の善悪というより“見せかけの秩序を壊した”ことで評価が一気に反転します。
なぜ有名人は「自分は大丈夫」と思ってしまうのか
有名人の場合、再生数やフォロワーの反応が日常的な自己評価の軸になります。
数字や称賛コメントに囲まれた生活をしていると、どうしても判断が鈍ってしまうものです。
「これだけ応援されているんだから」
「自分の生き方は間違っていない」
そう思い込んでしまい、倫理的な線引きがどんどん緩くなる。
その結果、「自分には特別なルールがある」と錯覚しやすくなります。
本人にとっては自由な選択でも、社会はそれを
“期待されていた人物像からの逸脱”
として見ます。
このズレが炎上の起点です。
炎上の本質は「信頼していたイメージ」が崩れること
有名人のブランドは、才能や数字だけでは成り立ちません。
誠実さや家族思いといった“印象の積み重ね”が、その人の価値を作っています。
不倫が致命的になるのは、倫理そのものより、
その印象を支えていた“信頼の土台”が崩れるからです。
ここが一番のダメージになります。
そしてこの構造は、有名人に限らず、企業や個人事業にもそのまま当てはまります。
企業・個人にとって炎上は「倫理問題」ではなく「事業リスク」
経営の現場では、不倫かどうかよりも
“信頼を失う構造があるかどうか”
が問題になります。
炎上につながる行動は、不倫だけではありません。
・SNSの不用意な投稿
・内部紛争
・セクハラ・パワハラ
・契約解除時のトラブル
これらも同じ構造で起きます。
「世間や顧客が描いていた期待ライン」を外れたときに、炎上が起こるのです。
だからこそ、倫理は感情の問題ではなく、
損失を防ぐための“リスク管理”だと私は考えています。
信頼を守るには「設計」が必要になる
弁護士として現場を見ていると、
不倫だけでなく、日常的な言動の積み重ねが信頼を左右する場面に多く立ち会います。
世間の倫理観は、ときに他人を裁くための道具として使われますが、
本来の倫理は「自分の信頼を守るための設計」です。
ここを理解しないまま判断すると、誰でも簡単に炎上します。
有名人の不倫は“悪事だから叩かれる”のではなく、
期待されていた人物像を壊した瞬間に信用がなくなるから終わるのです。
これは企業にも個人にもそのまま当てはまります。
契約書の設計、情報管理、SNSルール、危機対応の準備など、
信頼を守るための下地を整えておくことが、
経営においては最も現実的な防御になります。